障害があり、働けない、または収入が不足しているとき、生活保護は最後のセーフティネットになります。とくに障害者には通常の生活扶助に加えて「障害者加算」が上乗せされ、月額15,750円〜27,460円(令和8年4月時点・等級と級地別)が支給されます。
ただし、対象範囲が複雑で、「自分は加算の対象か」「障害年金とどちらが優先か」「精神障害者保健福祉手帳3級は対象か」など、判断に迷う点が多いのも事実です。
本記事では、厚生労働省告示(令和8年4月版)に基づき、障害者加算の正確な金額・対象範囲・申請方法、そして障害年金や特別障害者手当など他制度との関係まで網羅して解説します。読み終える頃には、ご自身やご家族が受給可能かどうか、いくら受け取れるか、どこに相談すべきかが明確になります。
障害者でも生活保護は受給できる(対象・障害年金との優先関係)
障害があっても、生活保護の受給は可能です。むしろ、就労が制限される障害者にとって、生活保護は重要なセーフティネットとして機能します。
受給可否の総論
- 障害の有無は生活保護の受給可否に直接影響しない
- 重要なのは「世帯収入が最低生活費を下回っているか」
- 障害者手帳を持っていない場合でも、実際に生活困窮状態であれば申請可能
障害年金との優先関係
生活保護法 第4条第2項により、「他の制度で受けられる給付」は生活保護に優先して活用する必要があります。そのため、障害年金の受給資格がある方は、まず障害年金を申請し、その上で年金額が最低生活費を下回る場合に、差額が生活保護として支給される構造です。
具体例(東京都区部単身・40代の場合)
障害年金が最低生活費を上回る場合は、生活保護の対象外となります。ただし、年金額がわずかに上回る場合でも、医療費や住宅費が高額な場合には生活保護の対象となるケースがあります。
障害者加算の対象範囲(等級・手帳種別)
障害者加算とは、障害があることで生じる追加の出費(医療費・通院費・介護費・特別な日用品など)を補うために、通常の生活扶助に上乗せされる加算制度です。
対象範囲(2区分)
障害者加算の対象は、以下の(ア)(イ)2区分に分かれます。それぞれ加算額が異なります。
(ア)等級1〜2級該当
(イ)等級3級該当
手帳種別による違い(対象/対象外マトリクス)
| 手帳・年金の種類 | 障害者加算の対象 |
|---|---|
| 身体障害者手帳 1〜2級 | ✅ (ア)対象 |
| 身体障害者手帳 3級 | ✅ (イ)対象 |
| 身体障害者手帳 4〜6級 | ❌ 対象外 |
| 精神障害者保健福祉手帳 1級 | ✅ (ア)対象 |
| 精神障害者保健福祉手帳 2級 | ✅ (イ)対象 |
| 精神障害者保健福祉手帳 3級 | ❌ 対象外 |
| 療育手帳のみ(単独) | ❌ 対象外 |
| 障害年金 1級 | ✅ (ア)対象 |
| 障害年金 2級 | ✅ (イ)対象 |
| 障害年金 3級 | ❌ 対象外 |
手帳と障害年金、どちらの等級が優先?
身体障害者手帳の等級と障害年金の等級は別の基準で判定されるため、必ずしも一致しません。たとえば身体障害者手帳3級でも、障害年金で2級と認定される場合があります。逆もあります。
申請の実務上は、有利な方(等級が上になる方)で申請するのが原則です。仮に却下されても、もう一方の等級で再申請できます。
障害者加算の金額(等級×級地別・正本テーブル)
障害者加算の金額は、(ア)(イ)の区分と、お住まいの級地(1級地〜3級地)の組み合わせで決まります。
障害者加算 月額(令和8年4月時点・厚生労働省告示)
| 対象者 | 1級地 | 2級地 | 3級地 |
|---|---|---|---|
| (ア)身体障害者障害程度等級表 1・2級該当または障害年金1級該当 | 27,460円 | 25,540円 | 23,620円 |
| (イ)身体障害者障害程度等級表 3級該当または障害年金2級該当 | 18,300円 | 17,020円 | 15,750円 |
出典: 厚生労働省「生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和8年4月)」
級地ってなに?
級地(きゅうち)とは、生活保護の支給額を地域ごとの物価差に応じて調整するための区分です。
ご自身の市区町村がどの級地に該当するかは、お住まいの自治体の福祉事務所、または厚生労働省「お住まいの地域の級地を確認」ページで確認できます。
具体的な受給イメージ
東京23区(1級地)在住の単身者で身体障害者手帳1級の場合
埼玉県川越市(1級地該当・中核市)在住の単身者で身体障害者手帳3級の場合
※実際の支給額は、年齢・世帯構成・他の加算の有無等により変動します。住宅扶助には特別基準額の3倍ルールに基づく特別基準もあります。正確な金額は、お住まいの福祉事務所での試算が確実です。
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重度障害者加算・関連加算制度
通常の障害者加算に加え、特に重い障害がある場合や複数の事情が重なる場合には、追加の加算が認定されることがあります。
重度障害者加算
日常生活において常時の介護を必要とする方に対して、通常の障害者加算に上乗せして加算されます。対象は概ね以下のような方です。
介護人雇上費(他人介護料)
在宅で生活する重度障害者が、介護人(ヘルパー)を雇う必要がある場合に、その費用を補うために認定される加算です。
放射線障害者加算
原爆症認定や放射線障害による特定の疾患がある方への加算です。
重度障害者加算・介護人雇上費・放射線障害者加算などの具体的な金額は、対象者の状況・地域・施設入所の有無により大きく変動します。詳しくはお住まいの福祉事務所のケースワーカーにご相談ください。
施設入所中・入院中の扱い
特別養護老人ホーム・養護老人ホーム・障害者支援施設などに入所している場合、重度障害者加算は対象外となります。また、入院中は生活扶助基準額自体が「入院患者日用品費」に切り替わるため、加算の扱いも在宅時とは異なります。
障害者が生活保護を受給するための条件
障害者であっても、生活保護の受給条件は基本的に一般の方と同じです。以下の4つの基本要件をすべて満たす必要があります。
条件1: 世帯収入が最低生活費を下回っている
世帯全員の収入(給与・年金・各種手当)の合計が、厚生労働省が定める「最低生活費」を下回っていることが必須です。最低生活費は地域・世帯構成・年齢で算定されます。
条件2: 活用できる資産がない
預貯金・不動産・株式などの資産は原則として活用が必要です。ただし、生活に必要な最低限の家財道具は保有が認められます。
特に障害者の方が留意したい資産の扱い:
条件3: 働く能力を活用している
働ける状態であれば、就労する必要があります。ただし障害により就労が制限される場合、就労できないこと自体が受給の不利にはなりません。医師の意見書や障害者手帳が、就労困難の根拠資料として活用されます。
条件4: 親族からの扶養が受けられない
民法上の扶養義務者(親・子・きょうだい)からの扶養が受けられないことが要件です。ただし、2021年の厚生労働省通知により、扶養照会の運用は大幅に省略されるようになっており、申請を諦める必要はありません。
障害者加算の申請方法と必要書類
障害者加算は「自動的に支給される」のではなく、「申請しないと支給されない」加算です。生活保護の本体申請と一緒に、または受給開始後に追加申請することができます。
申請の流れ
- お住まいの自治体の福祉事務所に相談予約
- 申請書類の提出(生活保護申請書 + 障害を証明する書類)
- 福祉事務所での審査(数週間〜1ヶ月程度)
- 認定後、申請月の翌月から障害者加算の支給開始
必要書類
障害を証明する書類として、以下のいずれか1つを提出します。
本人確認書類・収入を証明する書類なども併せて求められます。
ケースワーカーから案内がない場合
窓口によっては、案内が丁寧なところとそうでないところがあります。「自分は障害者加算の対象では?」と感じたら、自ら福祉事務所のケースワーカーに申し出てください。
他制度との併用関係(障害年金・特別障害者手当・障害福祉サービス)
障害者の方が利用できる制度は複数あり、それぞれの併用関係を理解しておくことが大切です。
障害年金との関係
障害年金は生活保護に優先して活用します。年金額が最低生活費を下回る場合に、差額が生活保護として支給される構造です。両制度の併用は認められていますが、両方を「満額」受け取ることはできません。
特別障害者手当との関係
特別障害者手当(令和7年度・月額約28,840円)は、重度の障害により日常生活で常時特別な介護を必要とする20歳以上の在宅障害者に支給される手当です。生活保護との併用は可能ですが、生活保護を受給している場合、特別障害者手当の支給額は収入として認定されるため、実質的に保護費が同額減額されます。ただし、申請する価値は十分にあります。
障害福祉サービスとの関係
障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス(居宅介護・就労継続支援・グループホームなど)は、生活保護受給者でも利用できます。サービス利用料は基本的に無料となります。
母子加算との関係
障害者加算と母子加算は原則として併給できません(厚生労働省告示で明記)。ただし、特定のケースでは例外が認められる場合があるため、福祉事務所での相談が必要です。
児童養育加算・介護施設入所者基本生活費との関係
障害者加算と児童養育加算・介護施設入所者基本生活費の併給は可能です。
複数制度の併用は複雑なため、申請前にご自身の状況を整理して福祉事務所に相談するか、社会福祉協議会・NPO法人・行政書士など第三者のサポートを活用すると安心です。
よくある質問(FAQ)
- QQ1: 障害者手帳がなくても生活保護は受けられますか?
- A
受けられます。生活保護の受給条件に「障害者手帳の保有」は含まれていません。世帯収入が最低生活費を下回り、4つの基本要件を満たせば、手帳の有無に関係なく申請できます。
- QQ2: 障害年金を受給していても生活保護は申請できますか?
- A
申請できます。障害年金は生活保護に優先して活用しますが、年金額が最低生活費を下回る場合は、差額が生活保護として支給されます。
- QQ3: 知的障害(療育手帳)は障害者加算の対象になりますか?
- A
療育手帳単独では対象外ですが、障害年金1〜2級を併せ持っている場合は加算対象となります。療育手帳の交付を受けている方の多くは障害年金の受給資格があるため、まずは年金の申請を検討してください。
- QQ4: 精神障害者保健福祉手帳3級でも障害者加算は受けられますか?
- A
受けられません。障害者加算の対象は精神障害者保健福祉手帳1〜2級までで、3級は対象外です。ただし、3級の方でも障害年金2級を受給していれば、年金を理由に加算が認定されます。
- QQ5: 障害者加算は申請しないと自動的にもらえないのですか?
- A
そのとおりです。申請が必要で、申請しなければ支給されません。また、申請が遅れても遡って支給されないため、対象者と判明次第すぐに申請してください。
- QQ6: 障害があると自動車を保有できますか?
- A
原則は保有不可ですが、「公共交通機関の利用が著しく困難な障害がある」「通院先が遠方で車がないと通院できない」「就労のために自動車が不可欠」など特定の条件下で例外が認められる場合があります。医師の意見書や通院先の所在地証明など、客観的な資料を準備して相談してください。
- QQ7: 障害者向けグループホームに入居中でも生活保護は受けられますか?
- A
受けられます。グループホームの家賃や利用料も住宅扶助・介護扶助等の対象になります。ただし、施設の種類によっては重度障害者加算が認定除外となる場合があるため、施設の運営形態を福祉事務所に伝えて確認してください。
まとめ
障害者の方の生活保護受給について、本記事の重要ポイントを振り返ります。
ご自身が受給対象かどうか、いくら受け取れるかをまずシミュレーターで概算を確認した上で、お住まいの福祉事務所のケースワーカーに相談してみてください。
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