生活保護を受けながら働くと、稼いだ分だけ保護費が減る。だから働いても手元に残るお金は変わらない。そう聞いたことがある方は多いと思います。これは誤りです。
働いて得た収入には勤労控除という仕組みがあり、収入のうち一定額は「無かったもの」として扱われます。そのぶん保護費は減りません。つまり働いた人のほうが、手元に残るお金は確実に増えます。増える額は気分の問題ではなく、国が定めた表で1円単位まで決まっています。
この記事では、その表の全文と、収入から何がどう引かれるのか、そして実際に手元にいくら残るのかを、厚生労働省の通知の原文に沿って説明します。数字を自分の収入に当てはめて確かめられるように書いています。
働いた収入は、全額が差し引かれるわけではない
生活保護の保護費は、最低生活費から「収入として認定された額」を引いた差額が支給される仕組みです。ここで大事なのは、「働いて受け取った額」と「収入として認定される額」は別物だということです。
受け取った額から3種類のものが引かれる
厚生労働省の「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年4月1日 厚生省発社第123号 厚生事務次官通知)は、勤め先から受け取った収入の扱いを次のように定めています。
勤労(被用)収入については、基本給、勤務地手当、家族手当及び超過勤務手当等の収入総額を認定
まず、手当を含めた総額が出発点になります。そこから引かれるものが3種類あります。
| 引かれるもの | 内容 |
|---|---|
| ① 実費 | 社会保険料、所得税、労働組合費、通勤費など、働くために実際にかかった費用 |
| ② 基礎控除 | 働くことに伴う必要経費として、収入額に応じて決まる額(この記事の中心) |
| ③ その他の控除 | 新規に就労した人、20歳未満の人などに、要件を満たす場合に適用される額 |
この3つを引いた残りが収入認定額です。そして、
支給される保護費 = 最低生活費 − 収入認定額:
収入認定額は「受け取った額」ではなく「控除を引いたあとの額」です。控除された分だけ、保護費は減らずに残ります。
基礎控除額表 — 収入がいくらなら、いくら控除されるか
基礎控除の額は、実施要領の別表「基礎控除額表(月額)」で定められています。同じ通知の本文には次のようにあります。
勤労に伴う必要経費として別表「基礎控除額表」の額を認定すること。
表には「1人目」と「2人目以降」の欄がある
基礎控除額表は、収入金額の区分ごとに2つの控除額を定めています。世帯の中で複数の人が働いている場合に、どちらの欄を使うかは国の通知で定められています。ご自分の世帯でどう適用されるかは、福祉事務所にご確認ください。
収入15,199円までは全額が控除される
表の最初の2区分は、控除額の欄に金額ではなく収入額そのものが書かれています。つまり収入が15,199円までなら全額が控除され、収入認定額は0円になります。保護費は1円も減りません。
なお、控除額が0円になる区分はありません。どれだけ収入が多くても、必ず何らかの額が控除されます。
基礎控除額表(全57区分)
以下が別表の全文です。ご自分の1か月の収入がどの行に当てはまるかを探してください。
| 収入金額(月額) | 1人目の控除額 | 2人目以降の控除額 |
|---|---|---|
| 0円 〜 15,000円 | 全額(0〜15,000円) | 全額(0〜15,000円) |
| 15,001円 〜 15,199円 | 全額(15,001〜15,199円) | 15,000円 |
| 15,200円 〜 18,999円 | 15,200円 | 15,000円 |
| 19,000円 〜 22,999円 | 15,600円 | 15,000円 |
| 23,000円 〜 26,999円 | 16,000円 | 15,000円 |
| 27,000円 〜 30,999円 | 16,400円 | 15,000円 |
| 31,000円 〜 34,999円 | 16,800円 | 15,000円 |
| 35,000円 〜 38,999円 | 17,200円 | 15,000円 |
| 39,000円 〜 42,999円 | 17,600円 | 15,000円 |
| 43,000円 〜 46,999円 | 18,000円 | 15,300円 |
| 47,000円 〜 50,999円 | 18,400円 | 15,640円 |
| 51,000円 〜 54,999円 | 18,800円 | 15,980円 |
| 55,000円 〜 58,999円 | 19,200円 | 16,320円 |
| 59,000円 〜 62,999円 | 19,600円 | 16,660円 |
| 63,000円 〜 66,999円 | 20,000円 | 17,000円 |
| 67,000円 〜 70,999円 | 20,400円 | 17,340円 |
| 71,000円 〜 74,999円 | 20,800円 | 17,680円 |
| 75,000円 〜 78,999円 | 21,200円 | 18,020円 |
| 79,000円 〜 82,999円 | 21,600円 | 18,360円 |
| 83,000円 〜 86,999円 | 22,000円 | 18,700円 |
| 87,000円 〜 90,999円 | 22,400円 | 19,040円 |
| 91,000円 〜 94,999円 | 22,800円 | 19,380円 |
| 95,000円 〜 98,999円 | 23,200円 | 19,720円 |
| 99,000円 〜 102,999円 | 23,600円 | 20,060円 |
| 103,000円 〜 106,999円 | 24,000円 | 20,400円 |
| 107,000円 〜 110,999円 | 24,400円 | 20,740円 |
| 111,000円 〜 114,999円 | 24,800円 | 21,080円 |
| 115,000円 〜 118,999円 | 25,200円 | 21,420円 |
| 119,000円 〜 122,999円 | 25,600円 | 21,760円 |
| 123,000円 〜 126,999円 | 26,000円 | 22,100円 |
| 127,000円 〜 130,999円 | 26,400円 | 22,440円 |
| 131,000円 〜 134,999円 | 26,800円 | 22,780円 |
| 135,000円 〜 138,999円 | 27,200円 | 23,120円 |
| 139,000円 〜 142,999円 | 27,600円 | 23,460円 |
| 143,000円 〜 146,999円 | 28,000円 | 23,800円 |
| 147,000円 〜 150,999円 | 28,400円 | 24,140円 |
| 151,000円 〜 154,999円 | 28,800円 | 24,480円 |
| 155,000円 〜 158,999円 | 29,200円 | 24,820円 |
| 159,000円 〜 162,999円 | 29,600円 | 25,160円 |
| 163,000円 〜 166,999円 | 30,000円 | 25,500円 |
| 167,000円 〜 170,999円 | 30,400円 | 25,840円 |
| 171,000円 〜 174,999円 | 30,800円 | 26,180円 |
| 175,000円 〜 178,999円 | 31,200円 | 26,520円 |
| 179,000円 〜 182,999円 | 31,600円 | 26,860円 |
| 183,000円 〜 186,999円 | 32,000円 | 27,200円 |
| 187,000円 〜 190,999円 | 32,400円 | 27,540円 |
| 191,000円 〜 194,999円 | 32,800円 | 27,880円 |
| 195,000円 〜 198,999円 | 33,200円 | 28,220円 |
| 199,000円 〜 202,999円 | 33,600円 | 28,560円 |
| 203,000円 〜 206,999円 | 34,000円 | 28,900円 |
| 207,000円 〜 210,999円 | 34,400円 | 29,240円 |
| 211,000円 〜 214,999円 | 34,800円 | 29,580円 |
| 215,000円 〜 218,999円 | 35,200円 | 29,920円 |
| 219,000円 〜 222,999円 | 35,600円 | 30,260円 |
| 223,000円 〜 226,999円 | 36,000円 | 30,600円 |
| 227,000円 〜 230,999円 | 36,400円 | 30,940円 |
| 231,000円 以上 | — | — |
231,000円以上のときは計算で出す
収入が231,000円以上になると表に行がなくなり、代わりに備考の規則で計算します。原文は次のとおりです。
収入金額が231,000円以上の場合は、収入金額が4,000円増加するごとに、1人目については400円、2人目以降については340円を控除額に加算する。
たとえば収入が231,000円から234,999円までの区分なら、1人目は36,400円に400円を足した36,800円、2人目以降は30,940円に340円を足した31,280円になります。
実際に手元にいくら残るのか
ここが、いちばん知りたいところだと思います。単身の方で、最低生活費が仮に13万円だったとして計算してみます(最低生活費はお住まいの地域と世帯の状況で変わります。実際の額は後述のツールで確かめられます)。
| 働いて得た収入 | 基礎控除 | 収入認定額 | 支給される保護費 | 手元に残る合計 |
|---|---|---|---|---|
| 働いていない | — | 0円 | 130,000円 | 130,000円 |
| 50,000円 | 18,400円 | 31,600円 | 98,400円 | 148,400円 |
| 100,000円 | 23,600円 | 76,400円 | 53,600円 | 153,600円 |
| 150,000円 | 28,400円 | 121,600円 | 8,400円 | 158,400円 |
働いていないときの13万円と比べてください。収入5万円なら18,400円、10万円なら23,600円、15万円なら28,400円だけ、手元に残るお金が増えています。
増えた額に見覚えがあるはずです。手元に残るお金の増加分は、基礎控除の額とぴったり同じになります。これは偶然ではなく、控除された分だけ保護費が減らずに残るという仕組みそのものの結果です。働けば働くほど、手元に残るお金は増えます。
なお、この表は基礎控除だけを引いた場合です。通勤費や社会保険料などの実費があれば、そのぶん収入認定額はさらに下がり、手元に残る額はもっと増えます。
ご自分の最低生活費がいくらになるかは、お住まいの市区町村・世帯構成・家賃によって変わります。次のツールで確かめられます。
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市区町村ごとの級地・住宅扶助に対応した自動計算ツールです。世帯構成・年齢・家賃を入力するだけで、生活扶助・住宅扶助・各種加算を含めた月額受給額の総額目安が1分でわかります。
ツールで出た月額受給額が、そのまま上の表の「働いていない」の行にあたります。そこから、ご自分の収入に対応する基礎控除の額を足せば、働いたときに手元に残る額のおおよその目安が分かります。ただし実際の認定は福祉事務所が行います。働き方を変えるときは、事前に担当のケースワーカーへ相談してください。
基礎控除のほかにある控除
基礎控除は誰にでも適用されますが、状況によってはさらに控除が加わります。実施要領は同じ箇所で次のように定めています。
新規に就労したため特別の経費を必要とする者については、別に定めるところにより、月額12,900円をその者の収入から控除し、20歳未満の者については、別に定めるところにより、月額11,900円をその者の収入から控除すること。
新しく働き始めた人への控除(月額12,900円)
働き始めたばかりのときは、通勤用の服や靴、身のまわりの道具など、まとまった出費が重なります。その負担を見込んだ控除です。「別に定めるところにより」とあるとおり、適用される期間や要件は国の通知で別に決められています。該当しそうなときは、就労を届け出るときにあわせて福祉事務所へお尋ねください。
20歳未満の人への控除(月額11,900円)
20歳未満の方が働いた場合の控除です。こちらも適用の要件は別に定められています。基礎控除と重ねて適用されるかどうかを含め、扱いは福祉事務所の確認が必要です。
実費として引かれるもの
実施要領は、実費として認定するものを具体的に挙げています。
勤労収入を得るための必要経費としては、社会保険料、所得税、労働組合費、通勤費等の実費の額を認定すること。
通勤費が実費として引かれるのは、見落とされやすい点です。交通費を自腹で払って通っているなら、その分は収入として数えられません。定期券の領収書や給与明細など、金額が分かるものを申告のときに一緒に出してください。
収入の申告は必ず行う
控除の仕組みは、収入を申告して初めて働きます。申告しなければ控除もされません。実施要領は申告について次のように定めています。
要保護者が保護の開始又は変更の申請をしたときのほか、実施機関において収入に関する定期又は随時の認定を行なおうとするとき、当該世帯の収入に変動のあったことが推定され又は変動のあることが予想されるときに、当該被保護者の収入に関し、申告を行なわせること。
申告が必要になる場面
働き始めたとき、仕事を変えたとき、勤務時間が増えたり減ったりしたときは、いずれも「収入に変動のあることが予想される」場面にあたります。給与明細を受け取ったら、その都度出すのが確実です。
申告しないと不利になる
申告しないままにすると、あとから収入が分かった時点でさかのぼって処理されます。申告しなかった期間について、控除を受けられたはずの分まで失うことになりかねません。収入を隠す意図がなくても、結果として返還を求められる場合があります。

申告は、受給者に不利な手続きではありません。控除を受けるための手続きです。正しく申告するほど、手元に残るお金は増えます。
よくある誤解
| よく聞く言い方 | 実際 |
|---|---|
| 働いた分だけ保護費が減るので、手取りは変わらない | 基礎控除の分だけ手元に残るお金は増える。収入10万円なら23,600円多くなる |
| 収入が15,000円までなら申告しなくてよい | 金額にかかわらず申告は必要。申告して初めて控除される |
| 短時間の仕事では意味がない | 収入15,199円までは全額が控除され、保護費は1円も減らない |
| 通勤費も収入に数えられてしまう | 通勤費は実費として控除される |
| 控除は「15,000円+超えた分の10%」で計算できる | 誤り。表は階段状で、式では出せない(下記参照) |
簡略式には注意してください。「15,000円+(収入−15,000円)×10%」という計算式を見かけることがありますが、これで収入10万円を計算すると23,500円になります。正しくは23,600円で、100円ずれます。基礎控除額表は式ではなく区分ごとに額が定められた階段状の表です。必ず表の行で確かめてください。
よくある質問
- Q働いた分だけ保護費が減るなら、働く意味はありますか?
- A
手元に残るお金は増えます。基礎控除の分は収入として認定されないため、保護費が減らずに残ります。収入10万円なら23,600円、15万円なら28,400円が、働かない場合より多く手元に残る計算になります。
- Q収入が15,000円以下なら、申告しなくてよいですか?
- A
申告は必要です。金額が小さくても収入の変動にあたります。結果として全額が控除され保護費が減らない場合でも、申告したうえでそうなる、という順序です。申告しないままだと、あとから返還を求められることがあります。
- Q交通費や社会保険料も、収入として数えられますか?
- A
実費として控除されます。実施要領は「社会保険料、所得税、労働組合費、通勤費等の実費の額を認定すること」と定めています。金額が分かる書類を申告のときに添えてください。
- Q世帯で2人が働いている場合、控除はどうなりますか?
- A
基礎控除額表には「1人目」と「2人目以降」の2つの欄があり、それぞれに控除額が定められています。どちらの欄をどの人に適用するかは国の通知で決められているため、ご自分の世帯での扱いは福祉事務所にご確認ください。
- Q働き始めたばかりですが、追加で受けられる控除はありますか?
- A
新しく働き始めたため特別の費用がかかる方には、月額12,900円の控除が定められています。適用の要件と期間は国の通知で別に決められているため、就労を届け出るときに福祉事務所へお尋ねください。
- Q20歳未満の人が働いた場合はどうなりますか?
- A
20歳未満の方には月額11,900円の控除が定められています。こちらも適用の要件は別に定められているため、福祉事務所での確認が必要です。なお、20歳未満であっても収入の申告そのものは必要です。
- Q収入が最低生活費を上回ったら、すぐに生活保護は打ち切られますか?
- A
ある月に上回ったからといって、その場で自動的に決まるものではありません。今後の収入の見込みや世帯の状況をふまえて福祉事務所が判断します。働き方を変えるときは、事前にケースワーカーへ相談してください。
- Q基礎控除の金額は毎年変わりますか?
- A
生活扶助の基準額のように毎年見直されるものではありません。基礎控除額表は実施要領の別表として定められており、改定があれば通知が改正されます。当サイトは厚生労働省の法令等データベースに掲載されている別表を2026年9月時点で確認して掲載しています。適用される額は福祉事務所にご確認ください。
まとめ
- 保護費は「最低生活費 − 収入認定額」で決まる。収入認定額は受け取った額そのものではない
- 収入からは①実費(社会保険料・所得税・労働組合費・通勤費など)②基礎控除 ③要件を満たす場合のその他の控除 が引かれる
- 基礎控除の額は実施要領の別表で区分ごとに定められている。式では出せない階段状の表である
- 収入15,199円までは全額が控除され、保護費は減らない
- 手元に残るお金の増加分は、基礎控除の額と同じになる。収入10万円なら23,600円多くなる
- 新しく働き始めた人は月額12,900円、20歳未満の人は月額11,900円の控除が定められている
- 控除は申告して初めて受けられる。金額の大小にかかわらず必ず申告する
働くことで生活保護の受給が不利になることはありません。仕組みを知ったうえで、無理のない範囲から始めてください。お住まいの地域での住まい探しについては、下記からお気軽にご相談ください。
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