生活保護を受けていると、障害のある方向けのサービスは使えないのではないか。窓口でそう言われた、あるいは自分で調べていて不安になった、という方は少なくありません。
結論から言えば、生活保護と障害福祉サービスは併用できます。それどころか、生活保護を受けている世帯は障害福祉サービスの自己負担が0円です。サービスを使ったからといって、生活保護費が減ることもありません。
この記事では、障害者総合支援法が定める16種類のサービスの全体像、自己負担が0円になる仕組み、生活保護の障害者加算との違い、そして申請の窓口までを、法律の条文と厚生労働省の公表資料にもとづいて整理します。
どのサービスが自分に使えそうかの見当がつくところまで、順に見ていきます。
生活保護を受けていても障害福祉サービスは使える
生活保護と障害福祉サービスは、別々の法律にもとづく、別々の制度です。どちらか一方を選ばなければならない関係ではなく、両方に当てはまれば併用できます。
「他の制度が優先」は「使ってはいけない」という意味ではない
混乱のもとになっているのが、生活保護法 第4条第2項の次の定めです。
民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
これは「他の制度で受けられるものがあるなら、まずそちらを使う」という意味です。生活保護は、それでもなお足りない分を補う制度だからです。
つまり、障害福祉サービスが使える状況であれば、先に使うことこそが制度の想定です。使ったせいで生活保護が受けられなくなる、という関係ではありません。
受け取るのは「お金」ではなく「支援そのもの」
もうひとつの安心材料は、障害福祉サービスが現金を受け取る制度ではないことです。ヘルパーに来てもらう、日中に通う場所を確保する、グループホームで暮らす。受け取るのは支援そのものです。
そして次に見るとおり、生活保護を受けている世帯の自己負担は0円です。現金が増えるわけでも、支出が増えるわけでもないため、家計の収支は変わりません。
使えるサービスの全体像
障害者総合支援法(正式名称は「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」)は、障害福祉サービスとして16種類を定めています(同法 第5条第1項)。厚生労働省は、これらを日常生活の介助が中心の「介護給付」と、自立や就労の訓練が中心の「訓練等給付」に分けて説明しています。
| 区分 | おもなサービス |
|---|---|
| 介護給付 (日常生活の介助が中心) | 居宅介護/重度訪問介護/同行援護/行動援護/療養介護/生活介護/短期入所(ショートステイ)/重度障害者等包括支援/施設入所支援 |
| 訓練等給付 (自立・就労の訓練が中心) | 自立訓練/就労移行支援/就労継続支援/就労定着支援/自立生活援助/共同生活援助(グループホーム) |
このほかに、2025年(令和7年)10月から就労選択支援が加わりました(同法 第5条第13項)。働き方を決める段階で、本人に合った選び方を支援するサービスです。
また、医療費の自己負担を軽くする自立支援医療も、同じ障害者総合支援法にもとづく制度です。車いすや補聴器などの補装具、市区町村が独自に行う事業もありますが、この記事では障害福祉サービスと自立支援医療を中心に整理します。
自己負担は0円
障害福祉サービスの利用者負担には、世帯の収入に応じた負担上限月額が定められています。生活保護を受けている世帯は、この上限が0円です。
| 所得区分 | 負担上限月額 |
|---|---|
| 生活保護(生活保護受給世帯) | 0円 |
| 低所得(市町村民税非課税世帯) | 0円 |
| 一般1 | 9,300円 |
| 一般2 | 37,200円 |
サービスにかかる費用のうち、本人が負担するのは原則1割です。ただし上限が0円である以上、実際に窓口で支払う額は0円になります。自立支援医療も同じく、生活保護受給世帯の負担上限月額は0円です。
0円にならないもの — 施設での食費と光熱水費
入所施設を利用する場合の食費と光熱水費は、サービスの費用とは別に実費として負担します。54,000円を限度として、施設ごとに額が決められています。ここは0円にはなりません。
障害者加算との違い
生活保護には障害者加算という仕組みがあります。名前が似ているため障害福祉サービスと混同されがちですが、まったく別のものです。
| 障害者加算 | 障害福祉サービス | |
|---|---|---|
| 何を受け取るか | お金(生活保護費への上乗せ) | 支援そのもの(ヘルパー・通所・住まいなど) |
| 根拠となる法律 | 生活保護法 | 障害者総合支援法 |
| どこへ申請するか | 福祉事務所 | 市区町村の障害福祉の担当窓口 |
| 自己負担 | — | 生活保護受給世帯は0円 |
この2つは、どちらか一方を選ぶものではありません。両方に当てはまれば、両方を受けられます。障害者加算を受けているからサービスが使えない、ということも、その逆もありません。
障害者加算がいくらになるのか、どの等級や手帳が対象になるのかは、障害者の生活保護はいくら? | 加算額・対象条件・申請の流れを解説にまとめています。
使うまでの流れ
入口はお住まいの市区町村にある障害福祉の担当窓口です。生活保護の相談先である福祉事務所とは別の窓口になることが多く、ここを取り違えると手続きが前に進みません。
- 市区町村の障害福祉の窓口に相談する
- サービスの利用を申請する
- 介護給付を希望する場合は、障害支援区分の認定を受ける
- サービス等利用計画案を提出する
- 支給が決定され、受給者証が交付される
障害支援区分とは
障害者総合支援法 第4条第4項は、障害支援区分を「障害者等の障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合を総合的に示すもの」と定めています。認定調査と市町村審査会による判定を経て決まります。
この認定が必要になるのは、おもに介護給付を希望する場合です。訓練等給付では手続きの進み方が異なるため、どちらに当たるかは窓口で確認してください。
ケースワーカーにも伝えておく
手続きそのものは障害福祉の窓口で進みますが、担当のケースワーカーにも伝えておくと、生活保護の側の記録と食い違いません。生活保護とは | 8つの扶助・受給条件・申請までの流れを解説もあわせてご覧ください。
65歳以上の方は、介護保険のサービスが優先される場合があります。介護保険と生活保護の関係については介護扶助とは | 対象者・自己負担・介護保険との関係を解説で整理しています。
よくある質問
- Q生活保護を受けていると障害福祉サービスは使えないと言われました。本当ですか?
- A
使えます。生活保護と障害福祉サービスは別の法律にもとづく別の制度で、どちらか一方を選ぶ必要はありません。生活保護法 第4条第2項は「他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われる」と定めており、使える制度を先に使うことは制度の想定に沿った行動です。
- Qサービスを使うと生活保護費は減りますか?
- A
減りません。障害福祉サービスは現金の給付ではなく、支援そのものを受け取る制度です。生活保護を受けている世帯は負担上限月額が0円のため、支出が増えることもありません。
- Q障害者加算を受けていますが、そのうえでサービスも使えますか?
- A
使えます。障害者加算は生活保護法にもとづく現金の上乗せ、障害福祉サービスは障害者総合支援法にもとづく支援であり、根拠も窓口も別です。両方に当てはまれば両方を受けられます。
- Q就労継続支援で工賃を受け取りました。申告は必要ですか?
- A
必要です。働いて得た収入は、額の大小にかかわらず福祉事務所へ申告します。ただし、働いて得た収入には控除の仕組みがあり、受け取った額がそのまま保護費から差し引かれるわけではありません。詳しくは生活保護の勤労控除 | 収入10万円なら23,600円・早見表と手元に残る金額をご覧ください。
- Q申請の窓口は福祉事務所ですか?
- A
障害福祉サービスの申請先は、お住まいの市区町村の障害福祉の担当窓口です。生活保護の相談窓口である福祉事務所とは別のことが多いため、市区町村のホームページや代表電話で担当課を確かめてから行くと確実です。
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まとめ
生活保護と障害福祉サービスは、別々の法律にもとづく別々の制度です。どちらか一方を選ぶ必要はなく、両方に当てはまれば併用できます。障害者総合支援法が定めるサービスは16種類あり、生活保護を受けている世帯の自己負担は0円です。施設での食費と光熱水費だけが実費の扱いになります。
入口は、お住まいの市区町村にある障害福祉の担当窓口です。まずは「どのサービスが使えそうか」を相談するところから始まります。生活保護の担当ケースワーカーにも、あわせて伝えておくと安心です。
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