生活保護が止まった。通知書は届いたけれど、これから何をすればいいのか分からない。収入が安定していないのに打ち切られてしまった。そうした状況にある方に向けて、この記事を書いています。
先に結論をお伝えします。生活保護の申請に回数の制限はありません。一度止まったあとでも、必要になればあらためて申請できます。過去に受けていたことが、次の申請の妨げになることもありません。そして、決定そのものに納得できないのなら、3か月以内なら審査請求という手続きも使えます。
この記事では、通知書の読み方から、再申請の進め方、そのあいだの生活をどう支えるかまでを順にまとめます。申請の基本的な流れは申請から受給開始までの6ステップにありますので、あわせてご覧ください。
最初に確かめること — 「停止」か「廃止」か
届いた通知書を手に取って、まずここを見てください。「停止」と書かれているか、「廃止」と書かれているか。この2つは、その後にできることがまったく違います。
生活保護法 第26条は、両方を並べてこう定めています。
保護の実施機関は、被保護者が保護を必要としなくなつたときは、速やかに、保護の停止又は廃止を決定し、書面をもつて、これを被保護者に通知しなければならない。
| 停止 | 廃止 | |
|---|---|---|
| 意味 | 一時的に支給を止める | 保護そのものを終える |
| 使われる場面 | 一時的な収入があったなど、また支給が必要になる見込みがあるとき | 安定した収入が見込めるようになったとき |
| 再び受けるには | 停止を解除する手続き | あらためて申請する |
| 健康保険 | 国民健康保険に加入することになる | 国民健康保険か勤め先の健康保険へ |
停止であれば、申請をやり直す必要はありません。担当のケースワーカーに事情を伝えて、停止を解除してもらう手続きになります。まずここを取り違えないでください。
停止のあいだは国民健康保険に入ることになる
意外に見落とされるのが、健康保険の扱いです。国民健康保険法 第6条第9号は、国民健康保険に加入しない人として「生活保護法による保護を受けている世帯(その保護を停止されている世帯を除く。)に属する者」を挙げています。
括弧の中が重要です。停止のあいだは、国民健康保険に加入することになります。受給中は医療扶助で窓口負担がありませんでしたが、停止になるとその扱いが切れます。持病があって定期的に受診している方は、真っ先にここを確認してください。切り替えが済む前に受診すると、窓口でいったん全額を払うことになる場合があります。
通知書のどこを読むか
生活保護の決定は、法律上必ず書面で通知されることになっています。口頭で「来月から止まります」と言われただけの状態は、法律が想定している形ではありません。通知書が手元にない場合は、まず交付を求めてください。
通知書で確認したいのは、次の3点です。
| 確認する項目 | なぜ大切か |
|---|---|
| 停止か廃止か | その後にできることが変わる |
| 理由 | 事実と違っていれば、争う根拠になる |
| 日付 | 審査請求の期限は、決定を知った日の翌日から数える |
理由の欄は、とくに丁寧に読んでください。「収入が最低生活費を超えたため」と書かれていても、その収入の計算に誤りがあるかもしれません。「指導に従わなかったため」と書かれていても、事実関係が食い違っているかもしれません。納得できない点があれば、そこが争う糸口になります。
理由の書き方が簡潔すぎて内容が分からない場合は、もう少し詳しく説明してもらうよう求めてかまいません。何をもってそう判断したのか、どの数字を使ったのかが分からないままだと、争うかどうかの判断ができません。電話でも窓口でも、聞いた日付と相手の氏名を控えておいてください。

通知書は捨てずに保管してください。再申請のときも、審査請求のときも、この書面が出発点になります。写真を撮っておくだけでも違います。
なぜ止まったのか — 理由には型がある
通知書に書かれる理由は、おおむね次のいずれかに分かれます。どの型かによって、次に取るべき手が変わります。
| 理由の型 | まず確かめること |
|---|---|
| 収入が最低生活費を上回った | 収入の計算が正しいか。勤労控除が差し引かれているか。一時的な収入ではないか |
| 資産が入った(相続・保険金・不動産の売却など) | いくらと評価されているか。すでに使い切っていないか |
| 他の自治体へ転出した | 転出先で申請し直す必要がある。手続きの流れを確認する |
| 指導・指示に従わなかった | 弁明の機会が与えられていたか(下記) |
| 連絡が取れなくなった・調査に応じられなかった | 連絡が取れなかった事情を説明できるか |
「指示に従わなかった」が理由のときは、手続きに決まりがある
生活保護法 第62条第3項は、指導や指示に従う義務に違反したときに「保護の変更、停止又は廃止をすることができる」と定めています。ただし、そのすぐ後に続く第4項が重要です。
保護の実施機関は、前項の規定により保護の変更、停止又は廃止の処分をする場合には、当該被保護者に対して弁明の機会を与えなければならない。この場合においては、あらかじめ、当該処分をしようとする理由、弁明をすべき日時及び場所を通知しなければならない。
「与えなければならない」と書かれています。事前に、処分しようとする理由と、弁明する日時・場所の通知が必要です。指示違反を理由に止められたのに、この機会が与えられていなかったのであれば、手続きの面で争う根拠になり得ます。心当たりがある場合は、通知書と、それまでに受け取った書面をすべて並べて確認してください。
取れる道は3つ
通知書の中身を確かめたら、次の3つのうちどれを選ぶかを決めます。どれか1つしか選べないわけではなく、2つを同時に進めることもできます。
| 選択肢 | 向いている場面 | 期限 |
|---|---|---|
| あらためて申請する | いま生活が成り立たない。収入が途切れた、病気になったなど、状況が変わった | 期限なし。いつでも何度でも |
| 審査請求する | 止めた判断そのものが誤っていると考える。収入の計算や事実関係に納得できない | 3か月 |
| 両方を進める | 当面の生活を立て直しつつ、前の判断にも納得していない | 審査請求の側は3か月 |
迷ったときの優先順位ははっきりしています。いま食べるものや住むところに困っているなら、まず再申請です。審査請求は結果が出るまでに1〜2か月かかるため、それだけで当面の生活は支えられません。
再申請のやり方 — 回数に制限はない
生活保護法 第7条は、保護の始まり方をこう定めています。
保護は、要保護者、その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする。但し、要保護者が急迫した状況にあるときは、保護の申請がなくても、必要な保護を行うことができる。
「申請に基いて開始する」とあるだけで、回数を制限する定めはどこにもありません。前回廃止されたことを理由に、次の申請を受け付けないという扱いはできません。生活保護は、そのときの状況で判断される仕組みだからです。
「前回から何が変わったか」を言えるようにしておく
再申請で審査されるのは、いまの状況です。前回と何が変わったのかを、具体的に説明できるようにしておくと話が早く進みます。
| 変化の例 | 示せるとよいもの |
|---|---|
| 仕事を失った・収入が減った | 離職票、給与明細、雇用契約の終了が分かるもの |
| 病気やけがで働けなくなった | 診断書、通院の記録 |
| 手持ちのお金が尽きた | 預金通帳(直近の記帳) |
| 家賃が払えなくなった | 賃貸契約書、滞納の通知 |
| 同居していた家族が転出した・収入がなくなった | 住民票、その家族の状況が分かるもの |
ただし、書類がそろっていないことを理由に申請を受け付けないことはできません。生活保護法 第24条第1項は申請書の提出を原則としつつ、「当該申請書を作成することができない特別の事情があるときは、この限りでない」というただし書きを置いています。必要書類の詳細は申請に必要な書類の記事にまとめていますが、そろえてから行く必要はありません。
「また同じ結果になるのでは」と思ったときは
再申請をためらう理由として多いのが、「どうせまた断られる」という見込みです。しかし、判断されるのは前回の状況ではなく、いまの状況です。前回と同じ材料しかないなら結果は変わりにくい一方、状況が変わっているなら結論も変わり得ます。
ここで効くのが、上の表の「理由の型」です。止まった理由が解消しているかどうかを、自分の言葉で言えるようにしておいてください。「収入が増えたため」で止まったのなら、その収入がいまどうなっているか。「資産が入ったため」なら、それがどう使われたか。理由と、いまの状況を並べて説明できれば、窓口も判断しやすくなります。
結果が出るまでの日数も決まっている
再申請でも、決定までの日数のルールは同じです。原則として申請から14日以内、調査に日数がかかるなど特別な理由があるときは最長30日までとされています(生活保護法 第24条第5項)。
そして30日を過ぎても通知が来ないときは、申請者の側から「却下されたもの」とみなして次の手続きへ進むことができます(同条第7項)。返事を待ち続けるしかない仕組みにはなっていません。
一人で行かなくてよい
一度止められた窓口へもう一度行くのは、気が重いものです。申請には同行してもらうことができます。家族でも知人でも、支援にあたっている人でもかまいません。誰に頼めるかは申請に同行できる人に、相談先の探し方は生活保護の相談窓口一覧にまとめています。窓口の組織については福祉事務所の役割もご覧ください。
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決定に納得できないとき — 審査請求は3か月以内
停止や廃止も、行政の処分のひとつです。判断そのものに納得できないのなら、審査請求ができます。
| 期限 | 処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月 |
| 宛先 | 都道府県知事 |
| 出す場所 | 都道府県庁でも、処分をした福祉事務所の窓口でもよい |
| 費用 | 手数料はかからない |
「60日以内」という説明を見かけることがありますが、それは2016年3月末まで有効だった古い数字です。現在は行政不服審査法 第18条第1項により3か月です。半分以下の期間だと思い込んで「もう間に合わない」とあきらめてしまうのは、いちばんもったいない誤解です。
書き方や出し方の詳細は、申請が却下されたときの審査請求の記事にまとめています。却下された場合も、停止・廃止された場合も、手続きの流れは同じです。
結果が出るまでの生活をどう支えるか
再申請の結果は最長30日、審査請求の結果は1〜2か月かかります。そのあいだの生活をどうするかは、現実的な問題です。
家賃の支払いが変わっている
住宅扶助を代理納付で受けていた場合、家賃は自治体から直接支払われていました。止まった月から、ご自身で振り込む必要があります。振込先と期日を、大家さんや管理会社に早めに確認してください。家賃が払えないときの支援制度もあわせてご覧ください。
今日明日に困っているなら、それを先に伝える
生活保護法 第7条の但し書きは、「要保護者が急迫した状況にあるときは、保護の申請がなくても、必要な保護を行うことができる」と定めています。待てない状況のために、申請を待たずに動ける仕組みまで用意されているということです。
所持金が尽きている、今夜泊まるところがない、薬が切れている。そうした状況なら、順番に説明する前に、まずその事実を伝えてください。「手続きの話をする前に、今日食べるものがありません」と言ってかまいません。緊急性が伝わるかどうかで、その日の動き方が変わります。
生活保護以外の受け皿もある
生活保護に至る前の段階を支える仕組みとして、生活困窮者自立支援制度があります。家計の立て直しや就労の相談、住まいの費用の支援など、自治体ごとに用意されている内容が違います。再申請と並行して相談することもできます。
体調が優れないなら、そこも伝える
収入が途切れた時期は、体調を崩しやすい時期でもあります。病気やけがで働けない事情があるなら、それも再申請のときに伝えてください。診断書があれば、判断の材料になります。
なお、収入が回復して保護が終わる「卒業」の場合には、就労自立給付金という給付金が用意されています。廃止の理由によって使える制度が違うので、通知書の理由の欄をもう一度確かめてみてください。
よくある質問
- Q一度打ち切られたら、もう申請できませんか?
- A
申請できます。生活保護法に回数を制限する定めはありません。前回廃止されたことを理由に次の申請を受け付けないという扱いはできません。
- Q「停止」と「廃止」は何が違いますか?
- A
停止は一時的に支給を止めるもので、再開には停止を解除する手続きになります。廃止は保護そのものを終えるもので、再び受けるにはあらためて申請します。まず通知書でどちらかを確かめてください。
- Q再申請するとき、前回と同じ書類をまた集める必要がありますか?
- A
いまの状況が分かるものが必要になります。ただし、書類がそろっていないことを理由に申請を受け付けないことはできません。まず窓口で申請の意思を伝えてください。
- Q再申請の結果は何日で出ますか?
- A
原則14日以内、特別な理由があるときは最長30日です(生活保護法 第24条第5項)。30日を過ぎても通知がないときは、却下されたものとみなして次の手続きへ進めます(同条第7項)。
- Q審査請求と再申請、どちらを先にすべきですか?
- A
いま生活が成り立たないなら、まず再申請です。審査請求は結果が出るまでに1〜2か月かかるため、当面の生活は支えられません。両方を同時に進めることもできます。
- Q審査請求の期限は60日ですか、3か月ですか?
- A
3か月です。処分があったことを知った日の翌日から起算します(行政不服審査法 第18条第1項)。60日は2016年3月末まで有効だった古い法律の数字です。
- Q停止のあいだ、医療費はどうなりますか?
- A
国民健康保険法 第6条第9号により、保護を停止されている世帯は国民健康保険の適用除外から外れます。つまり国民健康保険に加入することになります。切り替えの手続きを早めに行ってください。
- Q通知書をなくしてしまいました。どうすればよいですか?
- A
決定をした福祉事務所に問い合わせてください。停止か廃止か、理由、日付が分からないと、その後の手続きを選べません。今後のために、届いた書面は写真を撮って残しておくことをおすすめします。
まとめ — 止まっても、そこで終わりではない
- まず通知書で「停止」か「廃止」かを確かめる。停止なら解除の手続き、廃止なら再申請
- 停止のあいだは国民健康保険に加入することになる(国民健康保険法 第6条第9号)。医療費の扱いが変わる
- 申請に回数の制限はない。前回廃止されたことを理由に受け付けないことはできない
- 結果は原則14日以内、最長30日。30日を過ぎたら却下とみなして次へ進める
- 判断そのものに納得できないなら3か月以内に審査請求。「60日」は古い数字
保護が止まると、制度から切り離されたように感じるかもしれません。けれども、もう一度申請する権利は残っています。それは前回受けていたかどうかに左右されないものです。
通知書を手元に置いて、まず「停止か廃止か」を確かめるところから始めてください。そこが決まれば、次にやることは自然に決まります。
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