生活保護を受けている人は、いま全国にどれくらいいるのでしょうか。「増え続けている」「若い人が多い」といったイメージを見聞きすることがありますが、厚生労働省が毎月公表している統計を読むと、実際の姿はかなり違います。
結論を先に書きます。受給者は約197万人で、前の年より減っています。世帯の55.3%は高齢者世帯で、障害や病気を抱えた世帯を合わせると8割を超えます。そして人数は減っているのに世帯数はほとんど減っておらず、1世帯あたりの人数は1.2人まで下がりました。
この記事では、厚生労働省「被保護者調査」の最新の数字をもとに、いまの受給状況と長い目で見た動きを整理します。数字の読み方の注意点もあわせて書きます。制度そのものの中身は、生活保護とは何かを解説した記事にまとめています。
いまの数字 — 約197万人・約164万世帯
厚生労働省の「被保護者調査」は、毎月の受給状況を公表しています。令和8年(2026年)5月分の概数は次のとおりです。
| 項目 | 数値 | 前年の同じ月からの変化 |
|---|---|---|
| 受給している人(被保護実人員) | 1,970,237人 | 20,624人減(1.0%減) |
| 受給している世帯(被保護実世帯数) | 1,641,803世帯 | 3,953世帯減(0.2%減) |
| 人口に対する割合(保護率) | 1.60% | 前年同月は1.61% |
保護率1.60%は「およそ63人に1人」
1.60%という割合は、100人に1.6人ということです。言い換えると、およそ63人に1人が生活保護を利用していることになります。
学校のひとクラス、あるいは小さな職場を思い浮かべたときに、そこに1人いてもおかしくない規模です。「ごく一部の特別な人たちの制度」という感覚とは、実際の数字はずいぶん違います。
世帯の内訳 — 8割が高齢者世帯と障害者・傷病者世帯
受給している世帯を種類別に見ると、内訳ははっきりしています。
| 世帯の種類 | 世帯数 | 割合 | 前年の同じ月からの変化 |
|---|---|---|---|
| 高齢者世帯 | 903,908 | 55.3% | 2,053世帯減(0.2%減) |
| 障害者世帯・傷病者世帯 | 416,045 | 25.5% | 3,389世帯増(0.8%増) |
| その他の世帯 | 258,447 | 15.8% | 1,773世帯減(0.7%減) |
| 母子世帯 | 54,975 | 3.4% | 3,710世帯減(6.3%減) |
高齢者世帯と、障害や病気を抱えた世帯だけで、全体の80.8%を占めます。年金だけでは暮らせなくなった高齢の方と、病気やけがで働けなくなった方が、この制度の利用者の中心だということです。高齢者が受給する場合は年金との関係、障害のある方が受給する場合は障害者加算が問題になりますが、いずれも制度の想定内です。
いちばん大きく動いたのは母子世帯(6.3%減)
前の年からの変化で目立つのは、母子世帯の6.3%減です。世帯数そのものは54,975世帯と全体の3.4%にすぎませんが、減り方は4つの区分のなかで最も大きくなっています。
逆に増えているのは障害者世帯・傷病者世帯(0.8%増)だけです。高齢者世帯とその他の世帯は、わずかに減っています。母子家庭の受給では児童扶養手当との関係が、単身女性の受給では住まいの安全が、それぞれ別の論点になります。
4つの区分を1つずつ見ると、動き方がそれぞれ違うことが分かります。高齢者世帯は0.2%減で、ほぼ横ばいです。世帯数が90万を超える最大の区分なので、ここが動かないかぎり全体は大きく動きません。その他の世帯は0.7%減。景気に反応しやすい区分ですが、いまは緩やかに減る方向です。
唯一増えているのが障害者世帯・傷病者世帯の0.8%増です。人数にすると3,389世帯の増加で、全体が減るなかでの増加ですから、構成割合はじりじり上がっていることになります。そして母子世帯だけが6.3%という大きな減り方をしています。ただし元の世帯数が54,975と小さいため、全体への影響は限られます。
人は減っているのに、世帯は減っていない
ここが、いまの数字を読むうえで最も大切な点です。
| 人の減り方 | 1.0%減 |
| 世帯の減り方 | 0.2%減 |
人数は世帯の5倍の速さで減っています。この2つを割ると、1世帯あたり1.20人(1,970,237人 ÷ 1,641,803世帯)という数字になります。
1世帯1.2人ということは、受給世帯のほとんどが1人暮らしだということです。実際、厚生労働省の資料は「高齢者世帯の92.3%が単身世帯」(令和4年3月)と記録しています。
この「単身化」は、暮らしのかたちにも表れます。1人分の生活費で足りる一方、家賃や光熱費は世帯の人数に比例して安くなるわけではありません。同居する家族がいれば得られる支え合いも届きにくくなります。人数が減っているからといって、支援の必要性が薄まっているわけではないということです。

「受給者数が減った」というニュースを見ると、困っている人が減ったように聞こえます。しかし内訳を見ると、減っているのは主に人数であって、支えを必要としている世帯の数はほとんど変わっていません。1世帯あたりの人数が減っている=単身の高齢者が中心になっている、という構造の変化が背景にあります。
保護率は「分母」も動いている
もうひとつ、見落とされやすい点があります。保護率は人口に対する割合なので、受給者数だけでなく日本の人口そのものの増減にも左右されます。
今回の数字で確かめてみます。受給者数は1.0%減りました。一方で保護率は1.61%から1.60%へ、割合にして0.6%ほどの低下です。受給者の減り方より、保護率の下がり方のほうが小さいのです。
これは、分母である人口も同時に減っているためです。人口が減っている社会では、受給者数が減っても保護率はあまり下がりません。逆に、受給者数が横ばいでも人口が減れば保護率は上がります。保護率の変化を「困窮が増えた・減った」と直結させて読むと、実態を取り違えることがあります。
長い目で見た動き — 平成27年3月がピーク
厚生労働省の資料によると、生活保護の受給者数は約204万人だった平成27年(2015年)3月をピークに減少に転じました。令和4年(2022年)3月の時点では203万6,045人、世帯数は約164万世帯でした。
そこから令和8年5月の1,970,237人まで、ピークからおよそ7万人減ったことになります。約11年かけて3%台の減少ですから、急激に減っているわけではありません。「増え続けている」というイメージは、10年以上前の状況にもとづくものです。
「その他の世帯」は経済の動きに反応する
同じ資料は、世帯類型の変化についてこう記しています。母子世帯は減少傾向、高齢者世帯は増加傾向。そして世界金融危機のあと、「その他の世帯」の割合が大きく上昇した、と。
「その他の世帯」は、高齢・障害・傷病・母子のどれにも当てはまらない世帯です。現役世代が多く含まれるため、景気が悪くなると増え、回復すると減るという動き方をします。いまの15.8%という割合は、金融危機の直後と比べれば落ち着いた水準です。
言い換えると、高齢者世帯が構造的に増え、その他の世帯が景気で上下する、という2つの動きが重なっているのが現在の姿です。
母子世帯の6.3%減を、どう読むか
4つの区分のなかで最も大きく動いた母子世帯の6.3%減について、「母子家庭の困窮が解消してきた」と読みたくなります。しかしこの統計だけでは、そこまでは分かりません。
減った理由としては、収入が増えて保護を必要としなくなった、子どもが成長して世帯の区分が変わった、別の制度に移った、そもそも申請していない、といった可能性が並びます。被保護者調査は「いま何世帯が受給しているか」を数える調査であって、増減の理由までは示しません。
統計を読むときは、「何が分かるか」と同じくらい「何は分からないか」を押さえておくことが大切です。数字が動いた理由を、都合のよい説明で埋めないようにしてください。
お金の規模 — 生活保護費はどのくらいか
人数とあわせて知っておきたいのが、制度に使われているお金の規模です。厚生労働省の資料にある生活保護費負担金の実績額は、次のように推移しています。
| 年度 | 実績額 |
|---|---|
| 平成29年度 | 36,611億円 |
| 平成30年度 | 36,062億円 |
| 令和元年度 | 35,882億円 |
| 令和2年度 | 35,258億円 |
| 令和3年度 | 37,343億円 |
| 令和4年度 | 37,351億円(補正後予算) |
3兆5千億円台から3兆7千億円台のあいだで推移しています。受給者数が減っているのに金額が横ばいなのは、医療扶助の割合が大きいことと、高齢化が進んでいることが背景にあります。支給される中身は生活扶助や医療扶助など8種類に分かれています。
費用のおよそ半分は医療扶助
生活保護費は8つの扶助に分かれています。厚生労働省の資料にある扶助別の金額(令和4年度の当初予算)は、次のとおりです。
| 扶助の種類 | 金額 |
|---|---|
| 医療扶助 | 17,536億円 |
| 生活扶助 | 10,535億円 |
| 住宅扶助 | 5,966億円 |
| 介護扶助 | 932億円 |
| その他の扶助 | 290億円 |
医療扶助だけで、全体のおよそ半分を占めます。日々の暮らしを支える生活扶助より、医療扶助のほうが大きいのです。受給者の8割が高齢者世帯と障害者・傷病者世帯であることを思い出すと、この構成は自然に読めます。
3番目が住宅扶助、4番目が介護扶助です。受給者数が減っているのに費用の総額が横ばいなのは、医療と介護の比重が大きく、高齢化が進んでいるためだと読み取れます。
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数字を読むときの3つの注意点
1. 「概数」と「確定値」は違う
被保護者調査は、毎月の速報を概数として公表し、年度ごとに確定値をあらためて公表します。月ごとの数字は後から少し動くことがあります。数字を引用するときは、「何年何月分の概数か」を必ず添えてください。この記事の数字は令和8年5月分の概数です。
2. 「人」の数と「世帯」の数を混ぜない
上で見たとおり、人数と世帯数は違う動き方をします。世帯類型の割合(高齢者世帯55.3%など)は世帯の話であって、人数の割合ではありません。ここを取り違えると、まったく違う結論になります。
もう一点、この調査の性質として知っておきたいことがあります。被保護者調査が数えているのは「実際に受給している人」だけだということです。要件を満たしているのに申請していない人、窓口まで行ったが申請に至らなかった人は、この数字には入りません。
つまり197万人という数字は、「支えを必要としている人の数」ではなく「制度につながっている人の数」です。どれくらいの人が制度につながっていないのかについては、推計の方法によって結果が大きく変わるため、本記事では数字を示しません。ここでは「この統計には写っていない人がいる」という前提だけを押さえておいてください。
3. 全国の数字は、住んでいる地域の実感とは違う
保護率1.60%は全国の平均です。都市部と地方、あるいは自治体ごとに状況は違います。エリア別の生活保護情報では、自治体ごとの受給状況や福祉事務所の連絡先をまとめています。
最新の数字は、自分で確かめられる
この記事の数字は令和8年5月分の概数ですが、被保護者調査は毎月更新されます。厚生労働省のサイトに「被保護者調査」というページがあり、月ごとの概数と、年度ごとの確定値が公開されています。
見るときのコツは2つです。ひとつは、報道の数字ではなく、公表資料そのものを開くこと。報道は要約なので、世帯類型の内訳までは載らないことがあります。もうひとつは、「実人員」と「実世帯数」のどちらの話かを最初に確認することです。この記事で見たとおり、2つは違う動き方をします。
この数字を、自分の判断にどう使うか
統計は、大きな流れをつかむためのものです。ご自身が受けられるかどうかは、統計ではなく、ご自身の世帯の収入と最低生活費の比較で決まります。
ただし、この数字が役に立つ場面はあります。ひとつは、「自分だけが特別な状況にいるわけではない」と知ること。63人に1人という規模です。もうひとつは、周りの人に説明するときです。イメージではなく数字で話せると、話が前に進みやすくなります。
受給の要件そのものは生活保護の受給条件4つに、申請の流れは申請から受給開始までの6ステップにまとめています。生活保護までは至らない段階であれば、生活困窮者自立支援制度という受け皿もあります。
よくある質問
- Q生活保護を受けている人は全国に何人いますか?
- A
厚生労働省「被保護者調査」令和8年5月分の概数で1,970,237人です。世帯数は1,641,803世帯、保護率は1.60%でした。
- Q受給者は増え続けているのですか?
- A
いいえ。厚生労働省の資料によると約204万人だった平成27年3月をピークに減少に転じ、令和8年5月は1,970,237人です。前年の同じ月より1.0%減っています。
- Q受給世帯でいちばん多いのはどんな世帯ですか?
- A
高齢者世帯で、903,908世帯・55.3%を占めます。障害者世帯・傷病者世帯の25.5%を合わせると80.8%になります。
- Q保護率1.60%とは、どのくらいの割合ですか?
- A
100人に1.6人、およそ63人に1人という割合です。全国の平均であり、地域によって差があります。
- Q1世帯あたりの人数が1.2人というのは、どういう意味ですか?
- A
受給世帯のほとんどが1人暮らしだということです。厚生労働省の資料も「高齢者世帯の92.3%が単身世帯」(令和4年3月)と記録しています。
- Q生活保護費は全体でいくらかかっていますか?
- A
厚生労働省の資料にある生活保護費負担金の実績額は、平成29年度の36,611億円から令和3年度の37,343億円まで、3兆5千億円台から3兆7千億円台で推移しています。
- Q「概数」と「確定値」は何が違うのですか?
- A
概数は毎月公表される速報値で、確定値は年度ごとにあらためて公表される値です。月ごとの数字は後から少し動くことがあるため、引用するときは何年何月分の概数かを添えてください。
- Q統計を見れば、自分が受けられるかどうか分かりますか?
- A
分かりません。受給できるかどうかは、ご自身の世帯の収入と最低生活費の比較で決まります。統計は全体の傾向をつかむためのものです。
まとめ
- 受給者は1,970,237人・1,641,803世帯、保護率1.60%(令和8年5月分の概数)
- 世帯の55.3%が高齢者世帯。障害者・傷病者世帯を合わせると80.8%
- 人は1.0%減、世帯は0.2%減。1世帯あたり1.20人で、ほとんどが1人暮らし
- 約204万人だった平成27年3月がピーク。「増え続けている」は10年以上前のイメージ
- 生活保護費負担金は3兆5千億円台から3兆7千億円台で推移。不正受給は金額で0.4%未満
数字は、イメージを事実で置き換えるための道具です。ご自身の判断に使うときは、全国の統計ではなく、ご自身の世帯の収入と最低生活費を比べることから始めてください。
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